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2010年04月30日

澤田美喜さんの「遺志」後世に母屋保存へエリザベス・サンダースホームOBら

澤田美喜
 「ママちゃま」へのささやかな恩返しを―。戦後に駐留した米兵と日本人の間に生まれ、捨てられるなどした孤児を大磯町の広大な敷地に引き取り、約2千人を育てた澤田美喜さん(故人)が暮らした母屋を保存する活動が始まっている。孤児院「エリザベス・サンダースホーム」を巣立ち、たくましく社会で生きてきたOBたちが力を合わせ、澤田さんの遺志を伝える「象徴」として後世に残していく。

 澤田さんは三菱財閥の創設者、岩崎弥太郎の孫娘。外交官の澤田廉三氏と結婚し、国際舞台で幅広い人脈を培った。敬虔(けいけん)なクリスチャンでもあり、「占領下の落とし子」ともいわれた孤児の育成に使命感を抱き、生涯情熱を注いだ。1948年、大磯駅前の愛宕山の敷地(約3・5ヘクタール)に私財を投じエリザベス・サンダースホームを設立。幼稚園と小・中学校の聖ステパノ学園もつくり、孤児たちに教育を授けた。

 「16年間過ごしたホームはわが家。ママちゃまは母親同然。建物や、駆け回った庭や木の一本一本にも愛着がある。ここが帰るふるさと」。埼玉県で車整備工場を営むOB会会長の森博さん(54)は懐かしそうに話す。

 母屋は、関東大震災(23年)の直後に建て替えられた別荘の一部。風格ある平屋の木造和風住宅は、敷地内に唯一残る岩崎家ゆかりの建造物だ。最近はOB会の事務局として定期的に使われ始めたものの、それまで人の手がほとんど入らず老朽化が進んでいる。

 保存機運の高まりは昨年3月の吉田茂元首相邸(同町)の火災がきっかけ。「なんとかしなければ」との思いが強まり、OB有志が何度か応急処置を施してきた。しかし、本格的に修繕するには、宮大工の見積もりで少なくとも300万円はかかるという。

 「下を向くな。胸を張って堂々と生きなさい」。いわれなき差別にさらされた孤児たちを厳しくしつけ、自立を見守ってきた澤田さん。5月に没後30年を迎える。OBや当時の保母たち約60人は「母の日」に合わせて、再び思い出の地に集う。

 「ホームの原点である建物を守り、その歴史やママちゃまのボランティア精神を語り継いでいきたい」。森さんは強く願っている。

 ◇澤田美喜没後30年の集い 5月9日午前11時から敷地に立つ「海の見えるホール」で「澤田美喜没後30年の集い」が開かれる。一般参加も受け付け、母屋の見学も予定している。参加費500円(修繕基金用)。先着200人。問い合わせは、OB会電話0463(62)1088。

 ◆エリザベス・サンダースホーム 太平洋戦争後の財閥解体で、政府に物納されていた土地建物を買い戻して開いた。施設名は澤田さんが広く寄付を募った際、協力した英国人女性の名に由来する。孤児の多くは日本よりも偏見の少ない米国に養子として送り出された。現在、小中一貫校の聖ステパノ学園には一般家庭の児童生徒が多く通学するなど役割は大きく変わっている。
posted by ちーず。 at 20:54 | TrackBack(0) | 大磯町
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